認知と運動の相互作用

知覚は外界から脳への情報の入口,身体運動は脳から外界への情報の出口, 認知は入口と出口の間をつなぐプロセス,という一方通行的な見方が,古典的には一般的でした. しかし,人間の情報処理メカニズムでは,知覚・認知・運動は常に相互作用しながら変化していることは, 多くの研究が示唆しています.私たちは,脳のメカニズムまで視野に入れて,知覚・認知の相互作用と 統合のプロセスを解明し,その成果をコミュニケーションや情報通信に役立てることを目指しています.

研究テーマ

1.スキルの柔軟な切り替えを可能にする脳のメカニズム

人間はさまざまな運動スキルを習得し,状況に応じて柔軟にスキルを切り替えることができます. 機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,スキルの切り替えメカニズムを調べたところ,事前情報に基づいて予測的に切り替える場合と, 運動の結果をもとに事後的に切り替える場合では,活動する脳の場所や,脳内情報の流れが著しく異なることが解りました. この結果は,スキルの切り替えメカニズムがモジュールとして構成され,環境の変化に対する人間の柔軟な適応を可能にしていることを示しています.

事前情報に基づいて切り替える場合(水色)と事後情報に基づいて切り替える場合(紫)の 脳活動の違い

事前情報に基づいて切り替える場合(水色)と事後情報に基づいて切り替える場合(紫)の脳活動の違い
(Imamizu & Kawato, Journal of Neuroscience, 2008より)

2. 脳活動から運動を再構成する技術

ヒトを傷つけることなく計測した脳活動から,手先や指先の自然な動きを再構成することは,ブレイン・マシンインターフェイスの重要な基礎技術と なります. 私たちは現在,速く滑らかな動きを再構成するために,十分な時間情報を持つ脳磁図から,手先の動きを再構成することに取り組んでいます.

脳活動から再構成した手先の動き(画像をクリック、別ウィンドウが開きます)
(Toda A., Imamizu H., Kawato M., & Sato MA., NeuroImage, 2011より)

3. 小脳における認知・運動モジュールの可視化

コンピュータグラフィクスを用いて,認知機能に関する6つの実験結果のメタ解析を行いました. その結果,基本的な運動制御に近い課題ほど,小脳の上方・内側・前方で活動が見られ,高次な認知機能に近い課題ほど, 下方・外側・後方で活動が見られました.この結果は小脳が,運動に役立つのと同様の仕組みで, 認知活動にも貢献していることを示唆しています.

小脳のさまざまな認知・運動モジュールを示す動画(画像をクリック、別ウィンドウが開きます)
(Imamizu & Kawato, Psychological Research, 2009より)

研究に携わる人々

– 今水 寛
– 吉岡利福
– 清水 優

Last update Apr.2009