拡散光トモグラフィ法

要旨:光でヒト脳活動を計測する近赤外分光脳計測装置は、その簡便さ・非拘束性から、実験室環境における脳計測を日常環境に拡張する方法として注目を浴びています。しかし、現在の標準的な近赤外光計測では頭皮上の活動情報が得られるのみで、脳内のどこで活動が起きたかはわかりません。この問題を解決するために、近赤外光計測データから脳活動を三次元再構成する“拡散光トモグラフィ法”の研究をすすめ、fMRIなどの実験室環境の研究と日常環境の研究を飛躍なく繋ぐことを目指しています。

NIRSトポグラフィ は、脳活動の位置を調べる簡便な方法としてよく利用されています。しかし、計測感度の不均一性・頭皮血流アーチファクト・部分光路長が不明など解釈を歪める様々な要因が存在し、定量的な取り扱いが難しく、時に活動位置を見誤ることもあります。拡散光トモグラフィ法は、高密度計測(プローブ間距離15mm)と2つの解析処理(光伝搬シミュレーション・画像再構成)を行うことによって、計測データから脳内の活動位置を推定する方法です。拡散光トモグラフィ法により、上記で挙げたNIRSトポグラフィのもつ問題点は大幅に改善することができます。光が届く頭皮から20~30ミリメートルの範囲内にある活動に限定されますが、NIRSという装置を用いながらも、fMRIをよく近似する3次元画像を得ることが出来るようになってきています(Eggbert et al.2014)。

当研究室では、拡散光トモグラフィを得るための解析工程の1つである画像再構成部分のアルゴリズムを工夫することによって、拡散光トモグラフィの精度向上を目指しています。 Shimokawa et al. 2012では、スパース制約を用いたアルゴリズムにより、従来のスタンダードなアルゴリズム (深さ補正付き最小二乗法)よりも、深さ方向・水平方向の推定精度を向上することを示しました。Shimokawa et al.2013では、ヒトのように頭皮血流アーチファクトが存在しても、ロバストな画像再構成が可能な方法に発展させました。そして、右指運動タッピング中のヒト実験データ(被験者1人のケーススタディ)においても、fMRIと数ミリの誤差で画像再構成できることを確認しました(Yamashita et al. 2014)。現在は、複数被験者・複数課題条件における手法の優位性を確認しています。

 

diffuse optical tomography

参考文献

  • Eggebrecht, A. T., Ferradal, S. L., Robichaux-Viehoever, A., Hassanpour, M. S., Dehghani, H., Snyder, A. Z.,Culver, J. P. (2014). Mapping distributed brain function and networks with diffuse optical tomography. Nature Photonics, 8(6), 448–454.
  • Yamashita O, Shimokawa T, Kosaka T, Amita T, Inoue Y, and Sato M (2014), “Hierarchical Bayesian Model for Diffuse Optical Tomography of the Human Brain: Human Experimental Study”, Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics, Vol.18, No.6 pp. 1026-1033
  • T. Shimokawa, T. Kosaka, O. Yamashita, N. Hiroe, T. Amita, Y. Inoue, and M. Sato, “Extended hierarchical Bayesian diffuse optical tomography for removing scalp artifact,” Biomed. Opt. Express 4, 2411-2432 (2013)
  • T. Shimokawa, T. Kosaka, O. Yamashita, N. Hiroe, T. Amita, Y. Inoue, and M. Sato, “Hierarchical Bayesian estimation improves depth accuracy and spatial resolution of diffuse optical tomography,” Opt. Express 20, 20427-20446 (2012)